本の母。

 ―以前ちょっぴり取り上げたのはもう5年も前になるのか。
 日本を代表する児童文学作家の一人、松谷みよ子氏。

 その訃報を、今日聞いた。

 幼少期誰もが読んだ児童書の著者にして日本民話の編纂者。
 常に子供たちを慈しみ、育む立場にあった氏は、
 同時にそれを妨げるすべてのものを敵視してもいた。

 小さな女の子が健やかに育つ様を描く代表作の中に、
 ベトナム戦争の描写があったことが忘れられない。
 TVのチャンネルをどこに捻っても映し出される戦争の情景。
 それがやがて自分たちの近くにもやってくるのでは、と恐れを抱き、
 「ママ!せんそうはどこまでくるの?となりのまちまで?たばこやさんのかどまで?」と母親に聞くシーン。

 青春期を戦中に過ごし疎開経験もある氏にとっては、
 それはどうしようもなくリアリティに満ちた恐怖であったろう事は、想像に難くない。


 折しもまた世界中がキナ臭くなり、
 それが対岸の火事などと言っていられなくなってきている現代。

 今を生きる子供たちの未来に思いを馳せつつ、世を去ったであろう本の母に、ただ黙祷。
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