偽りの悦楽。

 ―聞く所によると。
 ニューヨークタイムズ紙が、大麻の法的規制を撤廃するように訴えているそうである。
 曰く「アルコールよりもよほどに無害。規制は様々な軋轢を生む」とのこと。

 マリファナの合法化を公然と謳うミュージシャンがいたり、
 かの国の所謂ドラッグに対する欲求は想像以上に強い様子である。


 この手のニュアンスにおける「ドラッグ」とは。
 脳の快楽中枢を刺激し、多幸感や高揚感あるいは安息感を与えるもの。
 脳にそのような部位があり、またそれに作用する化学物質があるというのは、
 実は「脳が自前でそういう物質を出す条件が、生存戦略上有利な行動」だからだ。
 本来「気持ちいい」事は、生きてゆくために必要なことなのである。

 ―ではやはりドラッグは人に必要なものなのかと言うと、「否」である。
 ドラッグのもたらす快楽は、生存戦略条件と全くの無関係であるからだ。
 それは結局、脳を欺いているに過ぎない。
 条件をすっ飛ばして、快楽中枢のみを強制的に刺激しているだけなのだ。
 
 ニュアンスとして。呼吸阻害剤系の毒物が細胞の内呼吸作用を欺くのとさほど変わらない。
 大まかに言ってドラッグは青酸毒や神経毒と何ら違いはないのである。


 そうやって自分を騙さなければ、生きた心地さえ覚えられない。
 ドラッグを求める風潮とは、結局そうやって生きづらい環境にいることの証明でもあるのだ。
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